「DLやまぐち号」乗車記

こんにちは、よこてんです。
いつもご覧いただきありがとうございます。

■ 悪役がついに主役に 学生時代の「客レ」が復活

「SLやまぐち号」と聞けば、あまり鉄道に興味はなくてもご存知の方は多くいらっしゃるかと思います。1979年にSLを復活運転させてから40年あまり、「貴婦人」C57 1号機、「ポニー」C56 160号機、そして「デゴイチ」D51 200号機と蒸気機関車が客車を牽いてきました。

わたくしの少年時代、SLは旅客列車の仕業はわずかに北海道に残るのみで、関西本線や城東貨物線(現おおさか東線)で貨物列車の牽引はしていたもののすぐに引退、代わってディーゼル機関車の「DD51」が貨物列車を牽引するようになりました。 当時DD51は四国を除く全国のSLを置き換えていき、SLファンにとっては悪者のような存在であったわけですが、時は流れてその悪者ですら貨物運用から撤退してしまいました。現在ではレールや、バラスト輸送など事業用の運用があるだけで、最後、一番目立っていた名古屋地区の運用もDF200へと置き換えられました(前々回お話ししました塩浜駅のタキも最近までDD51の仕業でした)。

「やまぐち号」ですが、故障修繕中のC57 1号機、定期検査中のD51 200号機に代わり今年は「DLやまぐち号」としてDD51 1043号機による運行となりました。わたくしにしてみれば、SLの牽く旅客列車よりもむしろ、学生時代の山陰線や福知山線の普通列車をイメージさせてくれるDLのほうが馴染み深く、このタイミングで「乗り鉄」を計画、超レアなDD51牽引の「客レ」に友人と乗車してきました。
新山口駅で出発を待つ「やまぐち」です。DD51を先頭にぶどう色の客車を5両従えています。ここから山陰の小京都津和野まで約60KMを2時間かけて走ります。

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■ レトロ感あふれる新製客車

客車は古風に見えますが、2017年に新製された35系4000番代です。かつての「旧型客車」35系客車をイメージして作られただけにとても好感が持てます。わたくしの学生時代は非冷房でしたが新製35系はもちろんエアコン付きです。
こちらが今回わたくしたちが乗車する5号車、津和野行きでは1両目の車両、スハテ35です。オハ31をモデルに復刻しています。
出発時間が迫っています。早速乗り込むことにしましょう。
10時50分、やまぐち号は新山口を出発しました。
車内はほぼ満席です。やはり子供連れのお客さんが多いですね。

 

5号車の車内はご覧のようにレトロ調、天井はダブルルーフ、LEDで白熱電燈がイメージされています。そしてややわかりにくいですが、背もたれ部分のモケットが貼られていません。この仕様は5号車のみで他の普通車はモケット貼りです。木製の背もたれはかつて学生時代に五能線で乗ったオハ61がこんな感じでした。ダブルルーフは別府鉄道ハフ7に乗車したことはありますが、残念ながら国鉄時代に経験することはありませんでした。

■ 細部にもこだわりが 

出発してしばらくは、住宅の目立つ地域を走りますが、湯田温泉、続いて山口に停車ののち宮野を通過したあたりから山がせまり田んぼが多い、レトロな客車が溶け込むのどかな風景のなかを走るようになります。窓は開閉可能でご覧のように開閉用の金具もレトロ感たっぷり。木製のブラインドも復元されそれでいてボックスシートごとにはちゃんとコンセントが設置されています。
そして、客車の壁に掛かる鉄道路線地図。こちらも昭和9年当時のものを復刻しています。廃止になった路線や、まだ建設されていない路線などもあり、見ていて楽しいですね。
こちらは洗面所になります。タイルでデザインされているところがレトロですね。でもしっかりとセンサー付きの蛇口でした。旧型客車の洗面台には確かにたんつぼもありましたね。

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■ 長閑な風景の中を

機関車側にある展望デッキはこんな感じです。

客車の形式にある「スハテ」の「テ」は展望車を意味します。旧型客車時代に展望車を備えていたのは戦前の特急に使用された「マイテ49」のみで35系には存在しませんでした。この「マイテ49」をイメージして作られたのが1号車、新山口寄りにつながっている「オロテ35」になります。

「仁保」を出ると、登り勾配にさしかかります。DD51はディーゼル機とはいえ上り坂では排気煙をしっかり出しますので、窓を閉めるようにと車掌からの車内放送がありました。
登り勾配を終えたところが「篠目」で写真はご用意できませんでしたが、SL時代に使用された給水塔がいまでも残っています。
篠目からはしばらくは長閑な田園風景が続きます。客車の窓の下にリベットが再現されているのがわかりますでしょうか。
こちらは、今回の記念乗車証です。「DLやまぐち」でつくられているのが良いですね。左側は地元アイドルとのコラボだそうです。

■ 旧友再会

列車は「地福」に到着しました。この駅では反対列車の行き違いのため約15分停車します。この時間を利用して鉄ちゃんもそうでない人も記念撮影の時間となります。
「DD51 1043号機」は1972年9月に日立製作所で完成、最初の配属先は亀山機関区でした。その後宮原へ転属、現在は下関総合車両所に配属されています。亀山機関区だけでも多い時には仲間が3~40両いたかと思いますが、現在はJR西日本全体でも8両、下関所属のDD51はこの1両のみです。

今回一緒に「乗り鉄」をしている友人は、元国鉄マン。しかも、竜華機関区に勤務していた関係で、この1043号機は亀山機関区時代関西本線の貨物列車を牽いて竜華に顔を出していたそうで、まさに旧友に再会したようなそんな気持ちで機関車を眺めていました。

「カメキ(亀山機関区)のカマ(機関車)は加太越えしてくるから、ええ感じに汚れてたなぁ」

当時竜華には、他にも吹田第一機関区のDD51が城東貨物線を経由して貨物列車を牽引、発着していたのですが、こちらは平野部ばかり。比べて亀山のDD51は、加太越えもあり、いくつかのトンネルを越えて竜華にやってくるため、排気煙が車体に付着して鉄ちゃん好みの汚れ方をしていたとか。

地福駅で、わたくしもみなさんとならんで1枚写真におさめました。

地福を出て、鍋倉を過ぎ列車は徳佐駅に到着、次は終点の津和野です。ここで「DLやまぐち号」の走行音をお楽しみください。出発時の警笛、補助台車のジョイント音、そして注意喚起の長い警笛(というかサービス警笛でしょうか)等々。
沿線は同業他社の「撮り鉄」も多数参戦していました。天候にも恵まれ良い写真が撮れたのではないでしょうか。

■ 「客レ」を堪能

船平山を通過すると列車はふたたび勾配をむかえ県境を越えます。島根県にはいると視界が開け津和野の町が広がります。
列車はゆっくりと坂をくだりながら、12時58分、定刻に津和野駅に到着しました。
駅前広場には、この山口線で活躍後引退したD51 194号機が保存されていました。
こちらは、新山口寄りの先頭車「オロテ35」、かつてのマイテ49をモデルにした展望デッキ付きのグリーン車になります。サイドの白線が凛々しいですね。内部は2列1列のリクライニングシートが並びます。ちなみにマイテ49の台車は3軸ボギーでしたが、さすがにそこまでの復刻はきびしいですね。ただ新製35系の台車はすべて空気バネで乗り心地はとてもよかったです。

 

グリーン車ですが「やまぐち号」は快速扱いなので安価で乗ることができます。したがってとても人気が高く、なかなか座席が取れない車両でもあります。参考までにに新山口~津和野間は普通車ですと運賃と料金込みで1700円、グリーン車の場合は2170円になります。この車両、1号車の展望デッキと展望デッキに隣接する展望室はグリーン車利用の方のみ使用できます。
(※2024年3月に料金の見直しがあり、新山口~津和野間は2850円、グリーン車利用の場合は3670円となりました)

津和野駅で客車を切り離して身軽になったDD51。いまからターンテーブルに向かいます。SLと違って本来DD51は転回不要なんですが、いわばサービスで転回をしているそうです。時間の都合で近くには行けませんでしたがホームから見ることはできました。

懐かしい「客レ」に揺られた2時間。沿線では、たくさんの方々が手を振ってくださっていました。
優しい気持ちに浸れた、そんな「DLやまぐち号」の旅でした。

 

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