旧大阪鉄道亀瀬隧道

こんにちは、よこてんです。
いつもご覧いただきありがとうございます。

前回はトラスがガーダー橋を支える珍しい橋梁、「第四大和川橋梁」をご紹介しました。

大阪方面からやってきた関西本線の列車は、河内堅上駅を過ぎると間もなく「第四大和川橋梁」にさしかかり、南岸へと渡ります。そしてしばらく走ったのちに今度は「第三大和川橋梁」でまたも北岸へと渡り、三郷駅へ向かいます。
実はこの区間、1892年(明治25年)に開通した際は北岸を通っていました。この2つの橋梁は存在していなかったことになります。

今回は、南岸に迂回せざるを得なかったこの地帯の特異な性質と、対策過程での世紀の大発見についてご紹介したいと思います。

■ 旧線跡は住宅が建ち並ぶ

前回と同じく河内堅上駅をスタート、龍田越え奈良街道を歩いて「第四大和川橋梁」をくぐり抜けたあたりです。関西本線はこの時点ですでに南岸を通っています。判然とはしませんが、この狭い道路は街道であったため廃線跡とは言えず、この道のどちらか片側が旧線路跡ではないかと考えます。前回触れましたように第四大和川橋梁の開通が昭和7年ですから、その時点でこちらの線路は使われていないことになりますのであくまでも推測の域です。

この場所を抜けると周囲が開けて、眼下に大和川、対岸に関西本線を眺めることができます。この一帯が「亀の瀬」です。

■ 世界的な超難所「亀の瀬」

関西本線が迂回を余儀なくされた「亀の瀬」は、世界でも最大級の地すべり地帯とされています。それは4万年前から繰り返され、万葉集でも「畏(かしこ)の坂」と記されて恐れられていました。その地すべりを防止すべく、長期にわたって対策工事が行われてきました。この場所に現在、「亀の瀬地すべり歴史資料室」が設けられ、様々な資料や対策設備について説明しています。

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「地すべり」と聞いて皆さんはどのような状態を想像されるでしょうか。
「土地が滑っていく」というのはわかるのですが、一般的によく聞く言葉として「がけ崩れ」があります。どのように違うのでしょうか。
がけ崩れは台風や集中豪雨、地震などで地盤が急激に動くのに対し、地すべりは粘土層などすべりやすい地層のその上部に堆積した土地がゆっくりと原形をとどめながら動くものとされています。がけ崩れが突発的であるのに対し、地すべりは継続的であり、再発することが特徴です。亀の瀬はドノコロ火山の溶岩が古い地層の上に堆積、地下水の影響で地すべりを起こしているとされています。

この地すべり地帯に線路を敷いたのが現在の関西本線の前身「大阪鉄道」で、明治23年に大阪側から、翌年には奈良側から、ここ亀の瀬まで線路をのばしています。亀の瀬では明治22年からトンネル工事に着手していましたが、やはりというか地すべりの発生でトンネル内に亀裂ができ、新たなトンネルの工事に着手して明治25年にようやく完成、開通の運びとなりました。それまではどうしていたのか。トンネルの両側に仮駅を設け、人力車で峠道を往復して暫定的に開通させていました。

その後、国有化された関西本線は輸送力増強のため複線化、亀の瀬トンネルも大正13年には複線開業しています。

昭和6年、亀の瀬で大規模な地すべりが発生します。これにより亀の瀬トンネルは崩壊、使用できなくなってしまいます。開業時と同様、仮駅を使って徒歩連絡により暫定的に営業していましたが、北岸に線路を敷くことを断念、南岸に走らせることになり、翌年2つの橋梁が架けられることになりました。これが現在の第四大和川橋梁、第三大和川橋梁となります。

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■ 奇跡的大発見

ボランティアガイドより紹介いただいた対策工事工法のひとつ、地すべりの原因となる地下水を排除する排水トンネルです。このトンネルを固い地層に張り巡らせ、そこに集水管という樋のようなものを地すべりを起こす地層からボーリング、地下水を抜く仕組みになっています。集水ボーリングは147㎞に及ぶとのことでした。
この他にも、滑る地層を取り除いたり、すべらないように最大100m近い杭を打ったりと、世界最高峰の技術で地すべりを抑止しています。

亀瀬隧道は昭和6年に崩壊、土砂も流入して、以降行方知れずになっていました。
ところが平成20年、先ほどとは別の排水トンネルを掘削中に大発見がありました。
なんと亀瀬隧道が出現したのです。行方不明から90年の歳月が流れており、しかも作られたのは120年前。それでいて原形をとどめていたのは奇跡的です。
少し見えにくいですが天井には煤が残り、SLが奮闘したことを物語っています。
トンネル壁面は美しくレンガが積まれています。ちょうど中間部までイギリス積みとなっていて、中間から上部にかけては長手積みとなっています。

そしてトンネルの先に出口はありません。地すべりによって流れ込んだ土砂がそのまま残されています。地すべりの恐ろしさを今に伝える、唯一の場所なのかもしれません。

■ 亀の瀬から「第三大和川橋梁」へ

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亀の瀬から、龍田古道を歩いて約15分くらいでしょうか、今度は「第三大和川橋梁」が見えてきました。
こちらも第四大和川橋梁同様、斜めに渡る構造です。左側のトラス橋部分は後から架け替えられており、右側のトラス橋とプレートガーダー橋が並ぶ橋梁でした。
本線筋でもあったため、地すべりが発生した昭和6年の翌年大晦日に開通しています。信じられない突貫工事ですね。地すべりを克服したいという執念が感じ取れます。
三郷駅に向かう地点です。関西本線が寄り添ってきますが、おそらくこの歩行者専用道が旧線の跡ではないかと思います。

このように「亀の瀬」は、龍田古道の古代ロマン、最先端の土木技術や、明治時代の鉄道遺構など貴重な体験ができます。しかも驚くことに無料です。鉄ちゃんも、そうでない方にもおすすめのスポットです。

今回もご覧いただきありがとうございました。

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