美しい鉄道遺産「薬水拱橋」
こんにちは、よこてんです。
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■ 拱橋って!?
鉄道を利用していると様々な鉄道構築物を目にすることができます。駅舎はもちろんのこと、跨線橋や車庫、さらには橋りょう、トンネルなど歴史的に価値のある建造物も少なくありません。華やかなものもあれば、ひっそりと息づいているものも多く存在します。今回はおそらく後者に属するであろう近鉄吉野線にある「薬水拱橋」(くすりみずきょうきょう)をご紹介します。
実は私、この橋の存在はおろか、拱橋という言葉も読み方すらも知りませんでした。
拱橋はアーチ橋という意味だそうです。
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■ スタートは「橿原神宮前」
近鉄吉野線の始発駅「橿原神宮前」は、大きな屋根を持つ美しい駅で、吉野線のほか南大阪線、橿原線が集まる主要駅です。南大阪線と吉野線は直通運転を行っていますが、橿原線は軌間が異なるため吉野線には乗り入れず、ここ橿原神宮前で折り返します。
阿部野橋方面から吉野行きがやってきました。行先表示は「普通 吉野」になっていますが、向かって右側の種別灯が点灯していますので、ここ橿原神宮前までは急行もしくは区間急行で運転されています。
■ 「薬水」は秘境駅の佇まい
JR和歌山線との連絡駅「吉野口」の次の駅「薬水」で下車します。この区間は距離的には短いのですが、急カーブ、急勾配が連続します。
「薬水拱橋」は、ここ薬水駅から徒歩数分の場所にあります。ちなみに「薬水」は奈良県内の近鉄線の駅で最も乗降客が少ない駅とされています。2018年の資料ですが、1日の乗降客数は100人に満たない85人です。この時も降りたのはわたくしだけでした。
架線柱の立つところが薬水駅になります。下を走る道路(県道120号)からは、ご覧のような階段をのぼらないと駅にたどり着きません。
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■ 風景に溶け込む2連のアーチ
こちらが「薬水拱橋」。レンガ造りの美しい2連アーチ橋です。
1912年(大正元年)、近鉄吉野線の前身「吉野軽便鉄道」の吉野口~吉野(現六田)間開業と同時に作られました。現在もなお現役で線路を支えています。
2連あるアーチ橋の片方は道路、もうひとつは薬水川が流れています。
ご覧のように扁額があり、書かれている文字は「薬水門」。その下の部分にも凝った装飾が施されています。
このアーチをくぐり抜けていくと薬水の集落になるのですが、あたかもヨーロッパの中世の町のようですね。門をくぐる集落というのも日本国内では珍しいのではないでしょうか。
この拱橋は、2013年に土木学会選奨土木遺産に認定されています。わたくしは土木に関しては全くの無知ですが、見るからに文化的価値の高い遺産であることが伝わってきます。
こちらが、もう一方の面になります。
ところどころの劣化は致し方ありませんが、レンガ積みのアーチはたいへん美しく100年以上も昔につくられたものとはとても思えません。
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■ 1世紀の時代を超えて
吉野方面からやってきた列車は、このアーチ橋を渡って国鉄線との連絡駅である吉野口に到着、貨物の受け渡しを行っていました。
蒸気機関車に牽かれた吉野産出の木材を積んだ貨物列車、湊町(現:JR難波)から王寺、高田、吉野口を経由して乗り入れた直通観桜列車、電化が完成して奈良県で初めて走った電気機関車、近鉄となってからの16000系「吉野特急」、26000系「さくらライナー」、そして16200系観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」と、「薬水拱橋」はそのすべてを知っているのですね。
現在は電車のみ通過していきますが、レンガ積みアーチ橋のため鉄橋のような反響音はありません。乗車しての感触はほとんど無いというのが正直なところですので、ぜひ薬水駅で下車して、その歴史的価値を感じていただければと思います。
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