「昭和」が感じられるローカル私鉄 三岐鉄道(1)

こんにちは、よこてんです。
いつもご覧いただきありがとうございます。

■ 「三岐鉄道」はどこにある?

少年時代、近鉄電車に乗るとドアの横に載せられた路線図を見ながらなんとなく思っていたことがありました。
名古屋までのノンストップ特急が走り、当然名古屋まで近鉄の路線があることは知っていましたし、湯の山温泉行きの特急もありましたので、路線図を眺めながら湯の山温泉の位置や、他にも養老線や北勢線、内部線など、いろいろな支線もあるんやな、ということも確認できました。

そんな中で、富田から出る「三岐鉄道」という路線が目にとまりました。当時の記憶が曖昧で、もしかしたら「三岐電車」と書かれていたかもしれません。

近鉄線の太く青い実線に対し、他社線ですから細く薄く記載されていましたが、「なんでここだけ近鉄と違うんやろ?」となんとなく気になったのです。

高校時代になり「三岐鉄道」を調べてみると、走っているのは西武の車両、そして貨物列車もあるということがわかりました。西武の電車といえば通勤型のロングシート、車内も限りなく国鉄の101系や103系に類似していて、これは関西線、大阪環状線でいつも乗る電車、さらに貨物列車に関しても地元の竜華操車場でいやというほど見ているため、当時はこの私鉄にまったく興味が湧かず足を運ぶこともありませんでした。

時代は移り、現在では貴重となった貨物列車が走り、しかも昭和の懐かしさが残る車両や駅舎が存在する私鉄となりました。今回、ようやく訪問する機会がありましたので三岐鉄道の魅力をお伝えしたいと思います。

 

■ 近鉄富田駅から「乗り鉄」開始

三岐鉄道は三重県北部の富田~西藤原間26.5kmの三岐線、三岐朝明信号場~近鉄富田間1.1kmの近鉄連絡線、さらに2003年、近鉄から譲り受けた西桑名~阿下喜間20.4kmの北勢線からなる路線です。今回の訪問は元々の路線、三岐線、近鉄連絡線がメインとなります。
近鉄を利用して富田にやってきました。写真は西改札口で三岐鉄道の管轄となり三岐鉄道のきっぷはこちらで購入します。北勢線も乗れる「三岐鉄道1日乗り放題パス」\1,200を購入しました。
西藤原行きはまだ入線していません。待ち合わせ時間を利用してJR富田駅に行ってみることにします。
歩いて7~8分のところにJR富田駅があります。
先述したように、三岐鉄道には貨物列車が運行されていて、ここJR富田駅で貨物の受け渡しが行われます。
JR富田駅は古い跨線橋が残る魅力的な駅です。関西本線の電車の向こうに電気機関車が停まっていますね。跨線橋を渡って、もう少し近くに行ってみます。
三岐鉄道の機関車、ED45型です。貨物がありませんので車両基地のある保々から回送してきたのでしょう。ここでJRから貨物を受けて、東藤原まで向かうことになります。この場所で受け渡し作業も見てみたいのですが時間の都合で今回は断念、再び近鉄富田に戻って三岐線の終点、西藤原まで「乗り鉄」を楽しみます。

 

機関車の手前に錆びた駅名板が残っているのがわかるでしょうか。
かつてはJR富田駅にも電車がやって来ていて旅客営業を行っていました。現在旅客列車は全て近鉄富田発着となっています。JR富田~三岐朝明信号場間は貨物列車のみ運行しています。

■ 見れば見るほど101系

近鉄富田駅に戻ってみると、3番線に三岐鉄道の車両が入線していました。1,2番線は近鉄の使用ですが線路の幅が違うため共用はできません。
車両はクモハ101形、元西武の401系です。確かに国鉄101系に似ていますね。
11時14分発の西藤原行きで、終点の西藤原まで乗ってみます。

近鉄富田を出発した列車は、近鉄線と並走しながら関西本線をオーバークロスしたのち左にカーブをとり近鉄線と別れます。すると今度は、先述した貨物列車のみ運行しているJR富田からの路線が近づいてきます。三岐朝明信号場で合流すると、その地点でもう一度関西本線をオーバークロスして西藤原方面へと向かっていきます。

富田の次の駅は大矢知駅、交換設備のある駅です。貨物列車が走るため長い場内を持ち、三岐線内交換可能駅の特長でもあります。平津駅を越えるあたりで住宅地がとぎれ緑が目立つ長閑な風景に変わってきます。心地よいモータ音が響き、さらに嬉しかったのは現在主流となっている早いものではなく「ドコドコドコ…」とゆっくりした懐かしいコンプレッサーの音でした。
15分ほどで車両基地のある保々駅に到着します。EL群やリバイバル塗装の車両なども見ることができました。

■ 保々駅で車両交換 851形に車両変更


さて乗車中のこの列車、近鉄富田発車時にも案内があったのですが保々で車両の交換がありました。となりに停車中の列車に乗り換えます。乗客にしてみれば迷惑かもしれませんが、わたくしにしてみれば違う車両も楽しめてお得な出来事でした。
乗り換えた列車は元西武701系の851形。3両編成でクハ+モハ+クモハの順。車内はまさに101、103。「禁煙」のパネルや昭和42年製造と記された西武所沢工場の車両銘板など、懐かしい「昭和」がいたるところに残っています。
列車は勾配を登り徐々に視界が開けてきます。
藤原岳の山容が大きくなってきました。三岐鉄道は元々はこの藤原岳で産出する石灰石を輸送する目的で敷かれた鉄道で、昭和6年に富田~東藤原間が開業しています。
伊勢治田駅に停車中です。ご覧のようにヤードが広がっています。戸袋窓がなんとも好いですね。

 

東藤原を過ぎると巨大なセメント工場が現れます。貨物列車はここが出発地点になります。

■ 約1時間の昭和旅を満喫
富田を出て一時間弱、勾配を登り山がかなり近くなったところで終点の西藤原に到着しました。空気がひんやりと感じられます。
三岐の「三」は三重県で「岐」は岐阜県を指し、当初は関ヶ原までの計画があったそうです。この先もう少しで県境なんですが路線は三重県内に留まっています。
駅舎はSLを模した造りになっています。

駅構内には機関車が保存されています。
SLのほうは「E102号機」。三岐鉄道開業時から電化するまで活躍した機関車だそうです。

ELは「ED22形2号機」。こちらは現在の大糸線にあたる信濃鉄道が3両発注したうちの1両で、西武鉄道に譲渡後、三岐鉄道にやってきました。1両は青森県の弘南鉄道で除雪用としていまでも現役だそうですから恐れ入ります。もう1両も解体されることなく保存されていて3両とも健在。幸せな機関車と言えますね。

三岐線の終点、西藤原駅まで昭和を感じつつ乗車してみました。
帰りは、少し途中下車をして三岐鉄道の魅力を探してみることにします。

 

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